毎年この時期になると、各会社では恒例的に大幅な人事の移動や組織の変更が行われる。
しかし、私の経験する限りでは、このような変更の都度、多少なりとも業務は停滞混乱し、それにより仕事が進めやすく
なったという思いはない。
会社活動は大勢の人々が参画した組織活動であるため、どちらかといえば、変えることより変えない方が良い場合が多い。
変えようとしている人達は、現在物事がうまくいっていないので、この際、組織や人事を一新しようと考えている人が
多数である。
しかし、その会社や職場がうまく機能していない原因は、組織や人事の悪さより、むしろその組織を活かし定着させる
為の地道な努力に陰りがあることが多い。より良い組織活動を展開する為には、組織の形の良し悪し以前に、まずそこに
集まった人々の、共通の目的へのこだわりと、そのもとでの働くことへの熱意の有無が優先する。
周りには、うまく組織が機能している会社より、うまくいっていない会社の方が多いのも事実である。しかし、それらの多くは、
前述のこだわりと熱意の喚起を必要としているにもか関わらず、安易な組織の変更や定例的な人事の異動によって、
これに対処しようとしている。当然のことながら、それらのもたらすものは、目先の変化による混乱以上のものは期待できない。
組織活動は、人々の組織への帰属意識と、働く意欲によって大きく左右される。それらは経営者や管理監督者の、
人々への活動参加への働きかけを、日々の仕事を通じて継続することよって醸成される。このような日常の努力なくして、
従来の慣例や新たに着任した経営者や管理者の嗜好的な変更は、手抜き経営と言わざるを得ない。
特に組織の安易な変更は禁物である。今の組織を活かし、活動を進め、仕事が成長していくに従い、組織の改善点は
顕在化してくる。そこで組織の変更を行えば十分間に合うことである。組織や人事は選択的のものではなく、むしろ育成
的要素が強いものである。
このような育成型の組織や人事の背景には、当然経営のあり方の改善が求められる。現在多くの企業に見られるような短期
の予算管理型の経営から、長中期の育成型の経営に変える必要がある。組織活動は本来大勢の人々がまとまり行動
していくことである。多くの人々がまとまり連携しあうことは、一朝一夕に出来ることではない。当然のことながら、数年
程度の継続が必要である。
しばしば見かける大きな改革は、前述の短期型の経営か放漫型の経営の破綻の結果であり、決して歓迎されることではない。
このような事態を避けるためにこそ長期にわたり、経営組織を育成していかなければならない。そのような経営土壌が
あってはじめて、効果的な組織変更や人事の移動が可能になってくる。
以上
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