発行者  株式会社岩城生産システム研究所

 編集者  有限会社IPSインターナショナル
   平成17年10月1日発行 007号 
 お知らせ

 岩城生産システム研究所NEWS・第007号を発行させていただきます。

今回は、NEC山口 生産推進室長・佐野 洋 様より頂戴いたしましたコラム 「半導体新時代は俺たちの手で」 及び 弊社

岩城 宏一のコラム 「無駄もいろいろ・3」 の続きを掲載させていただきます。

 なお、先日 弊社コンサルタントとして 新たに今井 嘉文が着任いたしました。

もう既にご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、本サイト内 「コンサルタント」 のページに今井の顔写真をUPさせて

いただきましたので、そちらもどうぞご覧下さい。宜しくお願いいたします。


                                                                  業務統括部

 「半導体の新時代は俺たちの手で NEC山口 
生産革新推進室長 佐野 洋 様

 当社が岩城先生をお招きして生産革新活動をキックオフしたのは2002年5月でした。 

当時、私は拡散ラインの製造部長をしており 多くの半導体製造ラインがそうであるように当社も製品の投入は生産

ラインを管理する部門の指示に基づき決められた量を投入して、各工程をPUSHで製品を流していました。 

管理するために生産管理グル−プをおき「作業が遅れている」、「仕掛かり品をためるな」、「製品の納期をまもれ」、

「最大のアウトプットを出せ」と現場に指示、介入しこれが仕事と考えておりました。 

またコンピュ−タ−を使ったより良い管理を求め改善を繰返してきたわけです。

 当時、私を含め当社の生産管理方法は他社より優れた管理を行っているという自負もありました。 

そんな状態のなかで岩城先生のご指導が始まったわけですので、なかなかカイゼンは進まず5Sのレベルから脱却

できずにいました。 

今思いおこすと、先生も「この人たちを変えるのは容易なことではないな」と思ったことでしょう。(私も先生と抵抗勢力

との板ばさみとなり大変な時期でした。) 

しかし、私自身 先生のご指導を受けながら現状の生産方式をこのまま続けてよいのだろうか?(なかなか下がらない

コスト)(お客様からの強まる短納期要求)市場の変化と共にモノづくりも変化しなければならない、当社もこのまま

ではまずいのではないかと考える様になってきました。

そこで、製造部内に製造課長(現在製造部長)をリ−ダ−として生産革新推進部隊を2003年に立ち上げ、恐る恐る

カイゼン活動に着手いたしました。この推進部隊がこの後大きな力となります これが一つ目の転機でした。


 
そして、二つ目の転機が2004年におとずれました。 当社のトップが替わり私も生産革新推進室へ異動となったの

です。 

しかし私自身はこの異動に対して大きな戸惑いを感じていました。 

そんな時、トップから「トヨタ生産方式をそのまま導入するのではなく半導体にあったトヨタ生産方式を追求していけば

よいのではないか」、さらに「われわれの知識は、今まで経験したことに基づく知識でしかない。 先ず先生の言われ

ていることをやってみて、それから考えようではないか。 そうしないとなかなか壁は破れない」、「そのための旗振り

役として生産革新推進室に異動してもらった」と言われました。

 それにより生産革新を推進する者としては活動の方向性が見え、急に目の前が明るくなりました。


トップのやる気と考え方を聞き我々の意識も大きく変わり、ブレ−キを踏みつつ推進していた活動が、アクセルをふ

み込んだ車の様に、にわかに進み始めました。 なにかを成し遂げようとする時、トップの理解、トップのやる気や

考え方が部下に対して大きな変化をもたらすことを、これほど痛感したことはありませんでした。 (トップが言った 

「先ずやってみて、それから考えよう」という言葉は、今でも当社ではよく使われています。)

それでも苦難の道は続きました。岩城先生からの叱咤激励いろいろありました。「人も 現場も何も変わっていないし、

変わろうとしていない。本気でやるつもりがあるのか」と厳しいお言葉を頂いたこともありましたが、その悔しさをばね

に、なんとかルビコン川を渡り始めています。 最近では、人もラインも会社も変わろうとしている姿が目にみえてき

ました。

 まだまだルビコン川を渡りきるまでは手を緩めるわけにはいきませんが、日本の製造業の復活は自らの変化によ

って成し遂げられると考えております。


 
半導体の新時代は、まさにこれから幕開けを迎えようとしております。それを明治維新の地、山口で俺の手と仲間

たちの手で共に実現していきたいと考えています。




                                                                    以上



 コラム「コンサルタントのひとり言」  岩城生産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

 
― 無駄もいろいろ・4 ―


設備を停めるな(つづき)

 必要でないものを造ることは、それ自体無駄なことをしていることになります。 そのため、今そのものを造る必要

があるかどうかの見極めは、ことさら大切なことであります。  このように、私たちが必要なものと不必要なものと

区別するとき、“今”からいつまでという時間の長さの限定が、無意識の内にも重要な判断基準となっているのに

気付くでしょう。


 “設備を遊ばせないように”という仕事の仕方は、“造っておきさえすれば、何時かは必要になるから”という気持ち

がその背景にあります。 ではこの“何時かは”いまから一体、何日後または何時間後のことを、指しているので

しょうか?  この点は一般的には極めて曖昧であります。強いて言えば、“今週中”または“今月中”程度のことを

意識しているかもしれません。


 一方トヨタ生産方式では、例えば 今から30分(みずすましの巡回サイクルタイム)以内のように、その時間は大変

短く、はっきりしているのです。したがって、その時間内に必要とするもの以外は、すべて不必要なものになります。


 ジャストインタイムに生産しているトヨタ生産方式からみると、このような生産の仕方は、とんでもないほど大きな

無駄をしていることになります。この無駄が如何に大きいか、以下にその正体を明らかにしてみましょう。


 この話はある工場での出来事であります。この工場のものつくりも、典型的な「“造っておけば
何時かは必要に

なるから” 流」であります。 私が視察した当日、「本日欠品分生産指示書」なるものを生産現場が持っており、それ

を見ながら生産をしていました。これは製品倉庫にある出荷場から発行されたもので、「今日の出荷引き当てに製品

在庫では足りないので、不足分を造れ」と言う指示書であります。


 このことは大変おかしな話です。 今必要なもの以外に何時か必要なものも含め、十分な量の生産し、在庫を持

っているわけですから、そこから不足分が発生すること自体、当初の思惑と違うことになります。

しかし実際はその欠品は相当の量であり、生産現場はいつもの通り何時か必要な分と、欠品分の 今 必要な分と

を合わせて生産しているのです。


 これは今必要なものをつくるために必要な人員、設備、資材の他に、さらに何時か必要になるものを造るための

余分な人員、設備、資材を抱えているという 大変大きな代償を払っているのであります。


 またその停滞量は非常に多く、トヨタ生産方式での在庫回転率は年間40回程度に比較し、数回転程度にとどま

っている場合が多いのです。 これらの無用な品物の停滞は、余分な人員、設
備、資材の他に、その維持管理、

資金、残存処理等のため、この分野でも大きな経費の発生を招いているのです。

 これらの膨大な無駄の発生は、「設備を止めたら大変」「造っておきさえすれば何時かの役に
立つ」といった

に対する曖昧な行動にすべて起因し、またその代償があまりに大きいことを、明記すべきであると思います。 



                                                                    以上


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